話者:松里鳳煌
「夏の思い出」という歌がある。ひと夏に冒頭部分だけが何百回となくアンコールされる。歌い手は母だ。子供の頃、コーラスに入れ込んでいた母が料理をしながら練習がてら歌っていた歌。外は晴天、テレビからは甲子園が流れ、扇風機がゆらゆらと動く。台所から母が料理をする音と歌声。そして思い出すのは戦争の残響に石丸茹園先生のこと。彼女は2001年8月10日52歳で亡くなった。師の奥様で、書家だった。私が彼女の年齢を迎えた年、師が不意に「そう言えばマッチャン、君江さんの歳だね」と笑顔で言ったことが思い出される。今回は彼女のことを語りたい。
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